信号レベルの整合以外にも使えるレベル変換バススイッチ

レベル変換バススイッチは、電源電圧の異なる回路の間で信号を送受するのに役立つ部品で、2.5Vで動作するDSPに5Vで動作するA/Dコンバータを接続する場合などに使われます。
電子部品に共通する特徴の一つが、端子ごとに規定された入力耐圧。印加することが可能な最大電圧を示す数字です。この規定のために、例えば2.5V用に設計された入力端子に5Vの出力信号を直接接続するようなことは一般的に行われません。
仮にどちらの端子も耐圧が6Vあったとしても、デジタル信号には1と0を識別するためのしきい値が存在しますから、そちらの整合も必要です。5V系の回路がCMOSレベルならしきい値は2.5V。従って、この組み合わせの場合は2.5V系の回路から5V系の回路に1の状態を伝えることができないことが分かります。
使い方は両者の間に挿入するだけです。それによって、端子に与える電圧レベルを適正に変換し、安全かつ確実な信号の伝達が可能になります。

構造と動作原理、バスドライバーとの違い

デジタル回路で利用されることが圧倒的に多いとは言え、レベル変換バススイッチの中身はアナログスイッチです。スイッチ素子にはFETが用いられ、これを通すことによって2.5Vの振幅が5Vの振幅へ、あるいはその逆へという具合にスケール変換されます。簡単に言えばプルアップされた直列接続抵抗を利用した分圧のイメージですから端子に方向性はありません。
等価モデルで考えれば、入出力端子間には抵抗が一本あるだけ。端子の静電容量を考慮しても伝搬遅延が非常に小さいのが特徴です。
バスドライバーにもデジタル信号のレベル変換機能を持つタイプがあります。傍目はどちらも同じに見えますが、中身は全く異なる部品です。
バスドライバーは純粋なデジタル部品。そのため原則2系統の電源が必要です。信号は一度明確な1/0信号に識別された後、相手先のレベルへと変換されます。言い換えれば波形の整形です。そのため10nsほどの伝搬遅延を伴います。
信号の方向も決まっていて、双方向と呼ばれる物の内部構造は、二つのバッファーを反対向きに組み合わせた格好です。よって方向を指定する端子が付いています。

レベル変換以外のアプリケーション

携帯情報端末など、バッテリーの大きさに制約がある電子機器では、使わない機能をスリープ状態にすることで省電力化をはかります。究極のスリープ状態は対象とする回路に給電するのを止めること。しかし、バスが接続された状態でこれを行うと、電源を落とした回路が壊れる可能性があるため、バスも一緒に絶縁しなければなりません。
レベル変換バススイッチに使われているFETは、オフ状態にするとドレイン、ソース間が高い次元で絶縁される性質を持ちます。ドレイン、ソースは対となっている入出力信号の端子につながっていますから、その特性を利用して、使わない機能を一時的あるいは継続的にメイン回路から切り離す目的で利用することが可能です。
パッケージは1回路入りから16回路以上入りの物まで様々なタイプがあるため、レベル変換やバス分離スイッチの他に、リレーのような感じで信号を選択する回路に使用することができます。